【高校野球・注目校 監督インタビュー 國學院久我山[前編]】“分刻み”の練習で勝てず…選手信頼して甲子園へ 「環境を目一杯使うことを考えて」
春夏通算7度の甲子園出場を誇る國學院久我山(東京)は、限られた練習スペースと練習時間でありながら、2022年選抜ではベスト4入りを果たすなど、都内有数の強豪校として知られる。勉学も重視し、OBからは東大合格者も輩出。「考える野球」を掲げる尾崎直輝監督に指導方針などを聞いた。
――昨秋の東京都大会では1次予選で敗退と悔しい結果に終わりました。そこからどうチームを立て直していきましたか。
「ポジションが結構変わりましたね。エースも違います。本当にいい競争をしてくれました。秋の段階ではチームができていなかったので、あの時よりも成長していると思います」
――重点的に強化したところはありますか。
「昨年末の合宿では、実戦をメインにして、試合の中でどう自分が機能するか、こういう時にはどう展開していったらいいか、チーム内でフィードバックをしました」
――この冬、一番成長した選手を挙げるなら誰でしょうか。
「2年生投手の柳本(晴)、3年生捕手の常木(竣一朗)は、練習の姿勢から、そのポジションをしっかりと自分が獲るんだ、という強い意欲を感じました。あとは二塁手の川島(統之)です。もちろんセンターの矢野(丈太郎)やサードの原(隆太朗)のように下級生の頃から出ていた選手も伸びてはいますが、ポジションを変更した先で、つかみ獲るという強い意志を感じたのが、最初に挙げた3人です」
――新入生もチームに合流しました。
「1年生に対してはありのままを見ています。こちらからアプローチはせず、ひたすら見ていて、その中で、この子はこういう時どう動くのかなというのを確認しています。特性が見えてくるのは8月の新チームあたりで、そこから少しずつ要求したり、指導が始まっていきます」
――2013年8月に23歳で監督に就任して10年以上が経過しました。
「監督5年目までは、分刻みで練習メニューを提示して回していくのが最も効率がいいと思っていたのですが、それでは勝てませんでした。6年目で自分が担任を持っている3年生に『今日の練習は何をする?』といった感じで、意見を聞きました。するとその夏、甲子園に行くことができました。選手にいろいろと学ばせてもらいました」
――選手の気質について変化はありましたか。
「僕の前では建前でしかしゃべれない子も多いですね。本音でしゃべってくれた時に信頼関係は構築されると思っています。『明日登板するのが怖いです』っていう選手がいても面白いと思うんですよ。緊張している選手がいたら自分から言いに来るのがウチのルールです。自分が弱いところを見せられたら、それで完璧です」
――練習を拝見していると、選手と頻繁にコミュニケーションを取っている印象を受けました。
「全然話しかけてこないですよ(笑)。でも、結果を出している代は結構話しかけてきていました。こっちからおちゃらけた雰囲気で行くときもあるし、自分から歩みよって、ちょっとした相談ができるような関係性を作ろうかなと思っていて、そういう感じで振る舞ったりすることもあります」
――スカウティングの際に中学生を見るポイントはありますか。
「年相応であってほしいです。純粋に野球小僧みたいなタイプが結構いいですね。ただ、何かを言われた時にすぐ受け答えができるとか、監督さんから冗談を言われた時に、それを上回る回答をする子は、なお良しです(笑)」
――限られた練習環境で結果を出し続けています。
「どこの環境に行ったとしても言い訳はいくらでもできます。まずはこの環境を目一杯使うことを考えてほしいです。隣の芝生は青いじゃないですけど、言い出したら切りがありません」
――進学校ゆえに練習時間も短いです。
「文武両道で勉強も大変ですね、とよく言われるのですが、高校は教育機関なので、勉強するのが本分。かつ部活動で野球という教科を学ぶようなものだと思っています。野球をする時に勉強を言い訳にしてほしくないし、勉強をしている時に野球を言い訳にしてほしくはないですね」
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