【高校野球・注目校 監督インタビュー 日大二[後編]】考えて攻めても勝てず…欠けていた“愛する心” 指揮官として掲げる「喜働考撃」
“大谷世代”の青年監督が、高校野球界に新風を吹かせている。春夏6回の甲子園出場を誇る日大二(西東京)を率いる齊藤寛文監督は、2023年1月に監督に就任すると、週休2日制を導入や、SNS・動画の有効利用など、時代に合わせた指導を行っている。昨秋の都大会では33年ぶりとなる4強進出。注目校の指揮官に、指導方針などを聞いた。
――日大二は「春夏秋冬日本一」を目標に掲げ、2月には「Baseball5」(ベースボール5)の日本選手権ユースの部に出場。4強入りを果たしました。
「一般的に高校野球の日本一は春夏の甲子園、秋の神宮大会じゃないですか。でも、ウチはベースボール5も入れて『春夏秋冬日本一』にしようぜ、と。メンバーも競争でどんどん絞り込んでいって、最後はベンチ入りを逃して悔しい思いをした選手もいました。また、ベスト4で終わった試合の後は、悔しくて涙ぐんでいる選手もいました」
――ベースボール5から学んだことはありますか。
「ベースボール5は素手でやるので、原点回帰ですよね。野手が捕りにくい球を投げたりすれば、ファーストも捕ることができません。あとは打球方向の重要性です。自分で球を上げて打つので、この場面は逆方向の打球が活用的だとか、考えてやるようになります。あとは(塁間などの)距離が短いので、走塁の時のターンなど、野球につながるものは多くありました」
――ご自身も日大二のOB。現役時代はどういう野球を心がけていましたか。
「自分が主将になった時に、考えて攻めようということで『考撃野球』というテーマでやっていました。考えて、考えて、追求して努力を積み重ねましたけど、勝つことはできませんでした」
――振り返ってみて、何が足りなかったと感じていますか。
「2019年夏に甲子園の決勝(履正社対星稜)を見に行きました。感じたのは、みんな野球を愛しているということです。選手はもちろん、観客も全員野球が大好きですから。そこで『喜働』という言葉を追加しました」
――「喜働考撃」をテーマに、選手たちの雰囲気はいかがですか。
「いい表情でやっていると思います。監督に怒られたらどうしようといった無駄な緊張は一切ないと思います」
――昨年1月にコーチから監督に昇格し、選手との接し方は変わりましたか。
「全然違いますね。コーチは1人に対してノックを打ったりしますけど、監督だとやってはいけない部分もあって、全体としてはよくならないこともあります。不平等感はあまりいい方向には働きません。具体的に物を言いすぎるのもよくないと思っています」
――なかなか厳しい指導ができない時代、どうしても怒りたい時などの「アンガーマネジメント」などはどうされていますか。
「私が怒った時は、坂東助監督がなだめたり、その逆もあったりして、2人トータルでアンガーマネジメントをしていますね」
――日大二は進学校としても知られています。学業面との両立は。
「学校からは『学業を軸にしっかり勉強させてください』と言われていますが、練習をやめて勉強をしなさいということはないですね。勉強ができなくても、勉強をしろということもありません。練習以外の時間にしっかりやりなさいという感じです」
――学校での選手との関わりは。
「社会と英語の教員免許は持っているのですが、今は学校の事務職員として広報を担当しています。担任の先生たちから教室での様子などの情報を仕入れています」
――指導者側からすれば、上のステージでも野球を続けてほしいという思いはありますか。
「ありますね。これまでだと、大学で野球を続ける選手は2,3人だったのが、今年はもっと多くの選手がチャレンジしたいと言っています。高校野球でお腹いっぱいになっていたというのもあるかもしれません。『喜働』の部分がしっかりと浸透してきたのではないかと思います」
――高校野球では珍しく、データ解析などを行うアナライザー班も置いています。
「実質的には昨年の秋前からですね。大学でもアナライザーに力を入れているところが多いので、進路にも結びつけられるようにやっています。4番打者もエースも、バッティングピッチャーをやってくれる控えの投手も、アナライザーも、チームの勝利に向かって頑張っているという点では同じです。役割意識の強い組織を作りたいと思っています」
――今後描いているビジョンを教えてください。
「とにかく選手にとっては1度きりの高校野球人生ですから。1年1年を必死に、やっていくだけです。もがきながら1年1年を重ねていき、気づいたらこんなところまで来ていたという日大二高の未来にワクワクしています」
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