「球をよく見る」は逆効果? 体が固まるなど“弊害”も…最適なのは「ぼんやり見る」
■日本ハム・松本剛をサポート…野口信吾氏は500人以上選手の目を観察
昨季パ・リーグの首位打者に輝いた日本ハム・松本剛外野手をサポートしているスポーツビジョントレーナーの野口信吾さん(以下、シンゴさん)が指導した打者には、「ボールを見ないようにして」覚醒した甲子園球児もいる。少年野球でも耳にする「ボールをよく見て」という指導は逆効果になる可能性があるという。また、子どももすぐに取り入れられるトレーニング法を紹介してくれた。
シンゴさんが松本のサポートを始めたのは2021年。スポーツビジョントレーナーとして活動を開始したのは、その5年ほど前からだった。これまで少年野球からプロ野球まで500人以上の選手を見てきた中で、目の使い方を変えて“覚醒”した高校生もいる。
過去にシンゴさんが指導したある高校には、チーム共通の課題があった。「外角低めを打てない」。各打者はスイングスピードや筋力はあった。だが、打撃フォームやタイミングの取り方を変えても改善しなかったという。特に、クリーンアップを任された3選手は苦労していた。そこで、シンゴさんが3人の目の動きをチェックしたところ、使い方に問題を見つけた。
トス打撃のような緩い球を目で追うだけでも頭が動いていた。「最も体から遠い外角低めを打ちに行く時は当然、頭が突っ込んでしまいます」。
シンゴさんは頭を動かさずに目だけで物を追う基本的なトレーニングを選手に課した。1か月が経った頃、クリーンアップ3人のうち2人は頭が突っ込むクセが改善されていた。その中で、苦戦していたのが主砲だった。マシンや打撃投手が相手の時は柵越えを連発するが、試合になると全く打球が上がらなかった。試合中の打席を観察すると、あることに気付いた。
「投球をずっと見てしまうクセがありました。投手が球を持つ前くらいから、ずっと球を見ているんです」
■目の使い方修正で主砲は本塁打量産…チームは犠打成功率100%
シンゴさんは「そんなに球を見なくてもいいよ」とアドバイスした。
少年野球では「球をよく見なさい」「バットに球が当たるところを見るように」と選手に伝える指導者がいる。だが、球を見ようとする意識が強すぎるとバットを振り出すタイミングが遅れたり、バットが最も加速するタイミングで球を捉えられなかったりするという。シンゴさんは打撃に悩んでいた主砲に「だいたいで見ることが大事」と伝え、ティースタンドを使った打撃練習でも球をぼんやりと見ながら打つように勧めた。
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この助言で目の使い方や投球の見方を覚えた主砲は覚醒した。夏の甲子園をかけた地方大会で本塁打を量産し、チームを聖地に導いた。他の選手も打撃の技術が向上した。
象徴的だったのは、犠打の失敗が激減したこと。甲子園切符をかけた夏の地方大会では犠打の成功率が100%になったという。シンゴさんは「バントの失敗は球を見過ぎて首や体が固まってしまうケースが多い。苦手な選手には、だいたいで見た方が良いとアドバイスしていました。選手本人の努力が一番ですが、目の使い方を知るとパフォーマンスが変わると選手は実感していました」と振り返る。
打撃を向上させる方法としては打撃技術の習得やフィジカルトレーニングが一般的。今後はビジョントレーニングに重点を置くチームや選手は増えていくかもしれない。
(間淳 / Jun Aida)
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