野球人口減少につながる“駒扱い” 保護者が真に求めるもの…重視すべき「個の上達」

野球人口減少につながる“駒扱い” 保護者が真に求めるもの…重視すべき「個の上達」

■多賀少年野球クラブ・辻正人監督…冬は座学で「ノーサインの土台づくり」

 

 グラウンドで練習できない時期は、頭を鍛える絶好の機会となる。日本一3度を誇る滋賀県の少年野球チーム「多賀少年野球クラブ」は冬場、座学の時間を増やす。この座学こそがチームの象徴であり、「ノーサイン=脳サイン野球」を可能にしている。

 

 指導で最も重視するのは「個の育成」。多賀少年野球クラブの軸は1年を通じてぶれない。First-Pitchでは、巷で話題の凄腕の指導者・コーチ12人を取材。チームを率いる辻正人監督は、こう話す。

 

「冬は雪でグラウンドが使えない期間もありますが、室内でも個の能力を伸ばす、技術を高める練習に重点を置いています。保護者はチームの強さ以上に自分の子どもの上達を求めています」

 

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 全国大会の常連で3度の日本一を成し遂げていても、辻監督はチーム力の強化よりも個の育成を大事にしている。それは、指導者が全ての場面でサインを出して選手を駒のように動かし、勝てる組織をつくり上げても、野球をやりたい子どもたちが増えないことを知っているからだ。

 

 今でこそ所属選手が130人を超える大所帯となっているが、かつてのチームは25人前後で推移していた。メンバーが増えたのは、選手の自主性を伸ばして楽しみながら上手くなる指導に転換してからだった。

 

■「無死二塁」の形を重視…座学には園児や小学校低学年も参加

 

 多賀少年野球クラブの自主性や考える力が凝縮されている特徴は、「ノーサイン=脳サイン」にある。監督やコーチが一切のサインを出さず、選手同士のサインやアイコンタクトで試合を進めていく。

 

 この戦い方ができる理由は、辻監督による座学にある。チームでは、アウトカウントと引き換えに走者を1つずつ進めれば得点できる「無死二塁」の形を重視。攻撃では無死二塁をつくる方法、守備では無死二塁を防ぐ方法を細かく追求する。その思考をチーム全体に浸透させるため、座学には園児も小学校低学年も参加する。

 

 辻監督は冬場に座学の回数を増やし、グラウンドが使える春になったら学んだ知識をプレーで表現できるように精度を高めていく。園児や小学校低学年に戦術や戦略の話はまだ早いと感じる人は少なくないが、座学の成果は確実に表れている。

 

 先日、辻監督は小学2年生の練習試合でベンチに入った。普段は練習で指導をしているものの、試合はコーチに任せているため、試合を見るのは久しぶりだった。辻監督が指示を出さなくても、選手から自然と声が出ていたという。

 

「子どもたち同士で『この場面は走者を進める打撃をしよう』と口にしたり、無死二塁の場面で自ら送りバントをしたりしていました。バントを決めた選手が安打と同じように喜んでいるのが印象的でした。チーム全員で1点を取る考え方が浸透して、バントに自己犠牲という意識がないからだと思います。小学2年生で、ここまで野球を理解しているのかと驚きました」

 

公式戦が増える春以降の準備と位置付けられる冬の期間。結果を残しているチームは、シーズンオフの過ごし方にも明確なテーマや狙いがある。

 

(間淳 / Jun Aida)

 

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