冬場の長距離走はほぼ非効率 “劣化”する足運び…投げ込みも「絶対にやらせない」

冬場の長距離走はほぼ非効率 “劣化”する足運び…投げ込みも「絶対にやらせない」

■野球スキルコーチ・菊池タクト氏「短距離走でも長距離走の足の運びになる」

 

 迎えるオフシーズン。長距離走などのランニングメニューに戦々恐々としている選手も多いのではないだろうか。ただ、少年野球の子どもたちに知識や経験を伝えている野球スキルコーチの菊池タクト氏は、野球選手が長距離を走ることは「非効率的」と異を唱える。それでは、どのようなランニングメニューを取り入れたらいいのだろうか。First-Pitchでは、巷で話題の凄腕コーチ12人を取材。今回は菊池氏が考えるオフシーズンの練習法に迫った。

 

 冬の間はボールを使わず、グラウンドや周回コースを何周も走らされた経験を持つ指導者世代は少なくないだろう。福島で育った菊池氏も現役時代は特に疑問に思うことなく、長距離走をこなしてきた。ただ、野球スキルコーチとなった今、長い距離を走るメニューは、「基礎体力アップにのみ効果的」と語る。

 

「出力が未熟な小学校低学年くらいの子は、ダッシュよりも、グラウンドを1周させた方が心肺機能も下半身の筋肉も高まるという考え方はあると思います。ただ、出力が出せる選手たちが長距離走をすると、スポーツに必要な体力や筋力とは違う部分の発達になる。それはかえって非効率的な気がします。極端な話、高校生世代で長距離走はほぼいらないと思っています」

 

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 それではランニングメニューは、どのくらいの距離を走ればいいのか。菊池さんの理想は「20秒で走りきれる距離」と言う。

 

「20秒ぐらいを全速力で走ると、速筋線維(素早く収縮することができる筋肉)のパワーは落ちてきて、そこから遅筋線維(ゆっくり収縮する筋肉)に切り替わっていく。だから大体150メートルとか、走っても200メートルくらいを3~5本ですね。投手も200メートル以上はいらないと思っています。高校生は長距離の走りすぎで、短距離走の時も、膝や太ももが上がらずに足先だけが上がるといった、長距離走の足の運びになっている」

 

■投手は「いかに球を投げずに体の使い方を改善できるドリルを行うか」

 

 オフシーズンは走り込み、振り込み、捕り込みといった「~込み」で個人のスキルアップにフォーカスしていくのが一般的。ただ、菊池氏がこの時期に「絶対にやらせない」メニューがある。投手の「投げ込み」だ。

 

「投手は『投げなければ投げないほどいい』と思っています。投手がスキルアップをするのであれば、いかに球を投げずに体の使い方を改善できるドリルを行うか。腕を振らなくても、下半身の体重移動だけを行う練習だとか、長いスティックを使って腕振りの模倣をさせます」

 

 温暖な地域では1年を通して投球練習を行うチームもあるが、菊池氏は米国にコーチ留学している期間、東海岸に比べ、西海岸の投手の方が肩肘に変調をきたすケースを何度も見てきた。

 

「僕がお世話になったニューヨークの方は、冬場は寒くて野球ができません。でも、西海岸は温かいので、投げることができる。オフシーズンがないことで、ジュニア期の肩肘を痛める割合が高いと聞きました」

 

 ジュニア期や学生期の限られた期間の中で、オフシーズンに投げ込みを行う気持ちもわからなくはない。ただ、肩肘を休ませ、投球動作のメカニズムを見直し、下半身を中心とした様々な箇所を鍛えることが、春先への飛躍につながる。地味なトレーニングをコツコツとこなし、怪我なく新シーズンを迎えられることが、菊池氏の願いだ。

 

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

 

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