丸一日練習→質を高めて成果 大所帯でも効率的…“雪国の不利”覆す日本一チームの工夫
■12月から雪で室内練習…日本一3度の滋賀・多賀少年野球クラブ
練習メニューが限られる時期は考え方や工夫次第で、より濃い時間にすることができる。所属する選手が130人を超える全国屈指の強豪チーム、滋賀・多賀少年野球クラブでは冬場、少人数のグループに分けて短時間で集中して練習する。First-Pitchでは、巷で話題の凄腕の指導者・コーチ12人を取材。チームを率いる辻正人監督は、かつての数をこなす練習から、1つ1つの動きの質を高める練習へと方針転換した。
多賀少年野球クラブが活動する滋賀県多賀町は例年、12月になると雪が降る。グラウンドで練習できる機会が大幅に減り、練習の中心は体育館となる。辻監督は近年、短時間練習で結果を出す方針を進めている。園児と初心者は午前9時から10時半、小学1、2年生は午前10時から正午というように学年別に時間差で練習。園児から小学6年生まで130人以上が待ち時間なく体を動かし、辻監督やコーチ陣の指導がより行き届く環境をつくっている。
体育館はグラウンドよりもスペースが狭いため、冬場の練習はグループの数を増やし、1グループあたりの人数を減らす。メニューは屋外では時間を割かない内容を組む。例えば、走塁であれば盗塁のスタートだけ、守備は牽制に特化する。
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辻監督は「グラウンドが全面使えるのであれば、実戦形式で盗塁や牽制の練習をします。冬場は、年中グラウンドが使える地域のチームでは気付かない練習に時間を使います」と説明する。体育館での練習はメニューが制限される一方、グラウンドにはないメリットもあるという。
「私たちのチームは練習時間が短いので、保護者が子どもたちの送迎だけで終わらず、練習を見学するケースが多いです。体育館は声が反響して私の言葉が保護者に届くので、親子で指導内容を共有して自宅で復習しやすくなります」
■目的を明確化することで指導の“深さ”が変わってくる
少年野球は土日祝日に丸一日練習するイメージが強い。辻監督も過去には、朝から夕方まで練習量をこなす指導を続けていた。打撃練習では2、3時間ずっとバットを振らせ、守備練習ではひたすらノックを打っていたという。
しかし、現在は捕球の確率を上げる足の運び方や捕球の位置など、ポイントを細かく伝えている。ゴロを捕球できなかった時は「何で捕れないんだ!」と罵声を飛ばすのではなく、「今のバウンドの合わせ方では、守備が得意な選手でも捕れる確率は低くなる。上手い選手は捕球の確率が高くなる位置に体を持っていく」と改善点を説明する。
辻監督は「目的を明確にして練習しているので、同じ練習時間でも今は指導の深さが違うと感じています。練習時間が短くなっても、子どもたちの能力は上がっています」と話す。雪が降る地域では、冬場に練習できるメニューや時間に制限がある。それをハンディと捉えるのか、テーマを設けた強化期間にするのか、考え方次第で春を迎えた時の差は明らかだろう。
(間淳 / Jun Aida)
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