左打席で初安打から5年後にプロへ 楽天外野手を首位打者に導いた“私生活”での意識

左打席で初安打から5年後にプロへ 楽天外野手を首位打者に導いた“私生活”での意識

■元楽天・鉄平氏はイチロー氏に憧れて左打者に転向…中1から本格的に練習

 

 イチローさんがいなかったら――。楽天時代の2009年に首位打者に輝いた鉄平氏は、小学6年生の時に左打ちに挑戦した。当時オリックスでプレーしていたイチロー氏への憧れが理由だった。最初はバットにボールが当たらず、練習試合でクリーンヒットを打つまでに1年以上かかったという。日常生活から左手を使うように意識し、プロの舞台で活躍する選手になるまで技術を磨いた。

 

「右打席の練習は全然していませんでしたが、プロに入ってからもロングティーでは左より右の方が打球を飛ばせました」

 

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 右利きの鉄平氏は小学2年生で野球を始めてから、しばらくは右打ちだった。転機が訪れたのは、小学6年生の時だった。当時オリックスに所属していたイチロー氏が、当時の日本記録であるシーズン210安打を記録。その姿に衝撃を受けた鉄平氏は左打者への転向を決めた。

 

 今と違って、好きな選手の動画をいつでも見られる時代ではない。鉄平氏はスポーツニュースでイチロー氏を繰り返し見て、打撃フォームを頭の中に刻み込んだ。「イチローさんのような打者になりたい」。その一心で、毎日バットを振った。

 

■練習試合のクリーンヒットまで1年 外角の対応に苦戦

 

 ただ、情熱はあっても、簡単には左打ちを習得できなかった。中学1年で本格的に左打者として練習を始め、練習試合で初めてクリーンヒットが出たのは中学2年生に学年が変わるタイミング。実に1年を要した。特に苦労したのは、外角への対応だった。左打者はスイングしてから自分の背中方向にある一塁へと走るため、やや逃げるようなスイングになってしまい、外角の球にバットが届きにくかったという。

 

「イチローさんに憧れていたこともあって、一塁に走る動きを入れたスイングになっていたので、走り打ちを若干抑えました。松井秀喜さん寄りの打ち方にしたイメージです」

 

 足が速かった鉄平氏は一塁までの距離が近い左打者の利点を生かすために早く一塁へ到達する意識は持ちながらも、スイングしてから走り出す打ち方に修正した結果、少しずつ外角の球にも対応できるようになった。さらに、素振りの際に投手の方向を見てスイングするだけではなく、三塁側に目線を移したスイングも取り入れ、自然と外角にバットが届く振り方を身に付けていった。

 

 左打者に転向してから次に直面した壁は、軟式から硬式への移行だった。中学まで軟式だった鉄平氏は、大分・津久見高から硬式でプレーした。球が硬くて重くなったことで「打撃の衝撃が全然違いました。スイングの形が保てませんでした」と打球が飛ばなくなった。

 

■食事、歯磨き、睡眠、勉強…私生活で左手を強化

 

 鉄平氏は、それまでの打ち方では通用しないと感じたという。バットにボールが当たった瞬間、踏み出した右足が球威に負けて浮いてしまう。軸足の体重を踏み出した足に無駄なく移し、バットに力を伝える打撃フォームを模索した。

 

 左打者に転向してから、日常生活でも変えた部分がある。「打席が右から左になると、景色が変わります。首の角度も変わります。左打ちにしてからは寝る時に、打席と同じように、うつぶせになって右を向くようにしました」。左打ちの景色や格好に慣れるため、子どもながらにできることを考えた。

 

 意識的に左手を使うようにもした。箸を持ったり、歯磨きをしたり、文字を書いたり、少しでも左手を思い通りに操れるように知恵をしぼった。

 

「筋力は利き腕には勝てませんが、神経が多少でも左にいくようになったらと思っていました。実際に効果があったか分かりませんが、意識付けです。最初は左手で上手く食事ができずストレスは溜まりました」

 

 鉄平氏はグラウンド内外で努力を重ねて、プロで首位打者を獲得するまでの左打者となった。「スピードを評価されてプロに入れたので、右打者のままでは厳しかったと思います」。左打者への転向が野球人生のターニングポイントとなった。

 

(First-Pitch編集部)

 

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