遅刻OK、練習欠席にも寛容 全国V3度の強豪が実践している意外な方針
■「送り迎えの親御さんは、野球だけではありませんから」
少年野球界のカリスマ指導者と呼ばれる辻正人監督が率い、全国大会優勝3度を誇る滋賀・多賀少年野球クラブ。今夏も“小学生の甲子園”の異名を取る「マクドナルド・トーナメント」に滋賀県代表として出場することが決まっている。「TURNING POINT」は同クラブの練習に密着取材。そのユニークな風景に驚かされた。
ホームグラウンドの滝の宮スポーツ公園では、未就学児童から小学6年生までのメンバーが、学年ごとに時間をずらして練習に取り組んでいる。ところが、練習開始時間に遅れてくる選手が目立つ。20分、30分……挙句、50分遅れで姿を現し、それでも辻監督に「おはようございます!」と屈託なくあいさつしてグラウンドに入っていく子どもがいた。それでも、誰もとがめない。
「終わる時間は厳守ですよ。ピタッと終わります」と笑う辻監督。遅刻を容認している理由を、「このグラウンドは、子どもたちが自分で準備をして、自転車で来たり、歩いて来たりできる環境ではなく、送り迎えが必要です。ほぼ、お母さん方が送り迎えをしていますが、親御さんは野球だけではなく、きょうだいを抱えていたりしますから」と説明する。「一応、練習開始時間は決まっていますが、絶対に来るようにとは言っていません」。何かと忙しい親の事情にも配慮し、子どもが野球を続けやすい環境づくりを優先している。
コーチから集合の掛け声がかかってもなお、グラウンド周辺の草むらで昆虫取りに夢中になっている子どもがいても、怒声を発する指導者はいない。命令強制は逆効果と考え、子どもの好奇心を優先しているからだ。
【実際の練習の様子】野球の常識を疑い誕生 “楽しみながら上手くなる”指導方針 #2
■“野球の常識”を疑え
練習を欠席することにも寛容である。辻監督は「むしろ、絶対に全員そろわないところが自慢です」とジョーク交じりに言う。家族側から欠席を申し出やすい雰囲気づくりに努めている。「だって、ディズニーランドに2日間行ったからといって、野球は下手にならないでしょう。逆に、家族がディズニーランドに行っている間、お祖母ちゃんに面倒を見てもらいながら野球をやっても、成果は上がらない。思い切り遊びに行って、次の週に思い切り野球をやった方がいい」と持論を述べた。
「野球道みたいな信念を教え込まれた人たちから見れば、非常識かもしれません。変わったチームだと思われるかもしれません。しかし、私は以前から“野球の常識”を疑い、普通の流れなら、こういうスポーツになると感じていました」とうなずく。「普通になってきたのだと思います」と、チーム創設から35年をかけて練り上げてきたやり方に自信を持っている。
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