
【野球経験より「人柄」を見る】元親コーチ監督がつくった約60名の組織マネジメント【後編】
三重県鈴鹿市を拠点に活動する庄野シリウス。
幼児から小学6年生まで59名が所属し、年代ごとに複数のカテゴリーへ分かれて活動する学童野球チームです。
前編では、部員13名だった時期から約60名へと成長した背景や、幼児・低学年から子どもを育てる仕組みについてご紹介しました。
一方、幼児から高学年まで多くの子どもが同時に活動するチームを、監督一人だけで動かすことはできません。
そこで重要になるのが、指導者の配置や役割分担、そして保護者との関わり方です。
林貴俊監督自身も、息子の入団をきっかけに指導へ携わった「親コーチ」の一人でした。
だからこそ、親コーチが持つ熱意と、難しさの両方を理解しています。
今回は、約60名のチームを支える庄野シリウスの組織づくりと、保護者・親コーチとの関係について伺いました。
この記事でわかること
・親コーチだけに任せない組織づくり
・親コーチを選ぶ時に見ていること
・野球経験よりも人柄を大切にする理由
・勝敗ではなく、子どもの成長を見る考え方
チーム概要

▲幼児から小学6年生まで59名が所属する庄野シリウス
チーム名
庄野シリウス
創設
1980年前後
部員数
59名
活動場所
三重県鈴鹿市
庄野小学校、鈴鹿川河川敷グラウンド
活動日
高学年:土日・祝日
※大会前などの時期に合わせて、水曜・金曜に平日練習を実施
低学年・幼児:土日
監督
林 貴俊(はやし・たかとし)
監督プロフィール
中学校から野球を始め、鈴鹿工業高等専門学校では硬式野球部に5年間所属。長男の入団をきっかけに親コーチとなり、約11〜12年前から庄野シリウスの監督を務める。現在は、幼児・低学年の育成や、保護者・親コーチとともに支えるチームづくりに力を注いでいる。
※記載情報は2026年7月現在
親コーチだけに任せない

▲常任スタッフと親コーチが役割を分担しながら子どもたちを支える
庄野シリウスでは、幼児・低学年、高学年など、それぞれのカテゴリーに親ではない常任スタッフを配置しています。
親コーチは、自分の子どもや、その子が所属する学年へ意識が向きやすいものです。
それ自体は、決して悪いことではありません。
自分の子どもを成長させたい。
同じ学年の仲間にも上手になってほしい。
そうした思いが、指導へ関わる原動力になります。
一方で、親コーチだけにチームを任せると、学年ごとに考え方が分かれたり、指導方針にばらつきが生まれたりする可能性もあります。
親コーチの熱意を生かしながら、
チーム全体を見る人も置く。
常任スタッフが全体の方針を確認しながら、親コーチと連携する。
それが、幼児から高学年まで一貫した育成を続けるための仕組みです。
親コーチを選ぶ時に見るのは、野球歴ではない
庄野シリウスでは、保護者が希望すれば、すぐに親コーチになれるわけではありません。
まずは、任意参加の保護者サポートとして練習へ加わります。
その中で林監督やスタッフが見ているのは、野球の技術だけではありません。
子どもへどのように声を掛けるのか。
失敗した子どもへどう接するのか。
自分の子ども以外にも目を向けられるのか。
周囲の指導者や保護者と協力できるのか。
そうした立ち振る舞いを、数か月かけて見ていきます。
親コーチを選ぶ上で大切にしているのは、
子どもが好きな人。
人柄の良い人。
野球経験は問わない。
という考え方です。
野球を詳しく知っていることよりも、子どもの成長を考えて動けること。
分からないことを学ぼうとする姿勢があること。
そして、チームと同じ方向を向けることを優先しています。
「人数を埋めるため」に指導者を選ばない

▲人数をそろえるのではなく、チームの考え方に合う人へ役割を任せる
庄野シリウスでは、すべての学年に必ず親コーチを置くとは限りません。
その学年に適任者がいなければ、別の学年を担当するスタッフや常任スタッフが支えます。
人数が足りないという理由だけで、指導者を増やすことはありません。
「人数を埋めるために選ばない」
指導者が一人増えることで、見られる子どもの数は増えます。
しかし、チームの考え方と合わない人を入れてしまえば、子どもへ伝わる内容が変わってしまいます。
誰に任せるかを慎重に考えることが、指導の質とチームの雰囲気を守ることにつながっています。
自分と同じ失敗を繰り返してほしくない

▲林監督の指導観に影響を与えた、多賀少年野球クラブ・辻正人監督との交流
林監督自身も、最初から現在のような指導をしていたわけではありません。
親コーチだった頃は、厳しい言葉や怒声が当たり前の環境にいました。
子どもを勝たせたい。
もっと上手になってほしい。
その思いが強くなるほど、子どもへ厳しく接しすぎることもあったと振り返ります。
大きな転機となったのが、約7年前に始まった多賀少年野球クラブ・辻正人監督との交流でした。
辻監督から細かな答えを一つひとつ教えてもらったわけではありません。
その行動や発信に触れ、自分の指導との違いに気付き、庄野シリウスで実際に試していきました。
幼児から野球を始められる環境。
投げ方や走り方の専門指導。
指導者自身が学ぶ仕組み。
子どもへの声の掛け方。
現在の庄野シリウスが取り入れている多くの取り組みも、そこから始まっています。
林監督が親コーチの選び方や指導者教育を大切にする背景には、自分自身が経験した失敗があります。
自分と同じ失敗を、
次の指導者には繰り返してほしくない。
だからこそ、コーチを任せる前に人柄を見て、任せた後もチームの考え方を共有することを大切にしています。
見るのは勝敗ではなく、庄野でどれだけ成長したか

▲勝敗だけではなく、一人ひとりの成長を見守ることを大切にしている
林監督が、親コーチへ繰り返し伝えている言葉があります。
「勝った、負けたではなく、
庄野にいる間にどれだけ成長できたかを見てほしい」
もちろん、試合に勝つことも大切です。
2025年には、チームとして初めてマクドナルド・トーナメントへ出場しました。
しかし、全国大会への出場だけが、チームの成功ではありません。
入団した時にはできなかったことが、できるようになる。
野球に自信がなかった子どもが、自分から練習へ行きたいと思えるようになる。
仲間と協力し、失敗しても前を向けるようになる。
一人ひとりの変化を、指導者と保護者が同じ目線で見守ることを大切にしています。
「庄野シリウスで卒団できて良かった」

▲卒団式は、選手や保護者と積み重ねてきた時間を振り返る大切な節目
林監督が最もうれしいと感じるのは、全国大会へ出場した瞬間だけではありません。
卒団式で、子どもや保護者から、
「庄野シリウスで卒団できて良かった」
と言ってもらえることです。
子どもが練習へ行きたいと思える。
保護者も、チームに関わって良かったと思える。
指導者も、勝敗だけではなく子どもの成長を喜べる。
その環境をつくるためには、保護者を単なる手伝いとして扱うのではなく、子どもを一緒に育てる仲間として迎える必要があります。
保護者を巻き込むのではなく、
同じ目的を持つ仲間になってもらう。
親コーチへすべてを任せるわけではない。
野球経験だけで指導者を選ばない。
チームの考え方を共有し、常任スタッフと親コーチが役割を分けながら子どもを支える。
こうした組織づくりそのものが、庄野シリウスに子どもが集まり続ける理由の一つなのかもしれません。
7月27日(月)21:00〜開催
子どもの本気を引き出す
大人の関わり方
全国優勝3回・多賀少年野球クラブ 辻正人監督が、子どもへの声かけや、保護者との関係づくり、人が集まるチーム運営についてお伝えします。








