
【部員13名→約60名へ】幼児から「ちゃんと教える」庄野シリウスの育成法【前編】
三重県鈴鹿市を拠点に活動する「庄野シリウス」。
1980年前後に創設された歴史ある学童野球チームで、現在は幼児から小学6年生まで59名が所属しています。
2025年には、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」へ初出場しました。
チームが掲げる言葉は、
「明るく、たくましく、前向きに」
頭文字を取って、チームでは「ATM」と呼んでいます。
野球が上手になるだけではなく、失敗しても前を向き、社会に出てからもたくましく歩んでほしい。
林貴俊監督は、そんな思いを持って子どもたちと向き合っています。
かつては、全学年を合わせても部員が13名だった時期がありました。
そこから、幼児・低学年から野球を始められる環境を整え、現在は約60名が所属するチームへと成長しています。
今回は、庄野シリウスが大切にしている育成方法と、入団した子どもをチーム全体で育てる仕組みについて伺いました。
この記事でわかること
・幼児・低学年から野球を始められる環境づくり
・部員13名から約60名へ増えた背景
・指導者や保護者も「教え方」を学ぶ仕組み
・入団した子どもをチーム全体で育てる方法
チーム概要

▲幼児から小学6年生まで59名が所属する庄野シリウス
チーム名
庄野シリウス
創設
1980年前後
部員数
59名
活動場所
三重県鈴鹿市
庄野小学校、鈴鹿川河川敷グラウンド
活動日
高学年:土日・祝日
※大会前などの時期に合わせて、水曜・金曜に平日練習を実施
低学年・幼児:土日
監督
林 貴俊(はやし・たかとし)
監督プロフィール
中学校から野球を始め、鈴鹿工業高等専門学校では硬式野球部に5年間所属。長男の入団をきっかけに親コーチとなり、約11〜12年前から庄野シリウスの監督を務める。現在は、幼児・低学年の育成や、保護者・親コーチとともに支えるチームづくりに力を注いでいる。
※記載情報は2026年7月現在
幼児・低学年から始められる場所をつくる

▲幼児・低学年も、楽しみながら上手くなる練習法を実戦
庄野シリウスが力を入れているのが、幼児・低学年の育成です。
取り組みを始めたのは約6年前。
当時、三重県内では幼児を受け入れるチームがまだ少なく、野球を始めたいと思っても、小学生になるまで待たなければならない家庭もありました。
「年長から野球を始めたい」
「幼児でも参加できるチームを探している」
そんな家庭が、鈴鹿市内だけでなく、市外からも庄野シリウスへ集まるようになりました。
現在は、年中・年長の子どもたちも参加しています。
幼児期から大切にしているのは、難しい技術を早く身に付けることではありません。
ボールを投げる。
バットで打つ。
思い切り走る。
まずは、野球に触れる時間を楽しむこと。
「もっとやりたい」と思える入り口をつくることが、庄野シリウスの育成のスタートです。
部員が自然に増えたわけではない
庄野シリウスには、全学年を合わせても部員が13名しかいなかった時期がありました。
現在の約60名という規模からは、想像しにくい数字です。
林監督は、ただ入団を待っていたわけではありません。
幼児・低学年から始められる環境づくりへ、チームの方向を大きく変えていきました。
その背景には、多賀少年野球クラブ・辻正人監督から受けた助言がありました。
幼児期から野球に触れられる環境をつくる。
林監督は、その考え方を庄野シリウスの環境に合わせて取り入れました。
多賀少年野球クラブの取り組みをそのまま真似するのではありません。
活動場所、指導者の人数、地域の家庭環境。
自分たちのチームに何ができるのかを考えながら、少しずつ形にしていきました。
その結果、幼児から入団する子どもが増え、口コミを通じて市外からも選手が集まるようになりました。
子どもが集まったのではなく、
始められる環境をつくった。
それが、部員13名から約60名へと増えた大きな理由の一つです。
子どもだけでなく、指導者も「教え方」を学ぶ

▲専門家による走り方の指導。コーチや保護者も教え方を学ぶ
庄野シリウスのもう一つの特徴は、子どもだけでなく、指導者や保護者も学んでいることです。
チームでは、投げ方や走り方、リズムトレーニングなど、それぞれの分野の専門家を招いています。
ただし、専門家から子どもたちが一度指導を受けて終わりではありません。
専門家がチームにいない日にも、同じ考え方で継続して指導する必要があります。
そのため、コーチや保護者も一緒に教え方を学びます。
専門家が子どもへ教える。
指導者と保護者も教え方を学ぶ。
日々の練習で同じ内容を繰り返す。

▲専門家がいない日でも継続できるよう、指導者も学ぶ
低学年と高学年で、伝える内容が大きく変わらない。
担当するコーチによって、教え方がばらばらにならない。
チーム全体で指導の基準をそろえることを大切にしています。
一部の選手ではなく、チーム全体を伸ばす

▲大切にするのは、入団してきた全選手を育てること
専門的な指導を取り入れた目的は、一部の選手だけをさらに伸ばすことではありません。
林監督が感じているのは、チーム全体の変化です。
「走るのが苦手な子が減る」
「投げられない子が減る」
特別に足の速い選手や、速いボールを投げる選手だけを育てるわけではありません。
正しい走り方や投げ方を学ぶことで、苦手だった子どもも少しずつできるようになる。
入団した時点での技術に関係なく、チームに入ってから成長できる環境をつくる。
その積み重ねによって、複数の選手が投手を任せられるようになるなど、チームの戦力にも厚みが生まれました。
2025年に初めて全国大会へ出場できた背景には、幼児期から積み重ねてきた育成と、指導者自身が学び続けてきた時間があります。
入団した子どもを、チームで育てる

▲入団時の技術に関係なく、一人ひとりを育てることを大切にしている
卒団生や保護者の口コミをきっかけに、庄野シリウスへ体験に訪れる家庭も増えています。
卒団後に中学野球へ進んだ選手や保護者から、
「庄野では、投げ方や走り方をきちんと教えてもらえる」
という話を聞き、弟や知人の子どもが体験へ来るケースもあるそうです。
募集の言葉だけで人を集めるのではありません。
実際に活動した子どもや保護者の実感が、次の入団につながっています。
強い選手を集めるのではなく、
入ってきた子どもを育てる。
幼児・低学年から野球を始められる環境。
指導者や保護者も教え方を学ぶ仕組み。
苦手な子どもを置き去りにしない指導。
こうした積み重ねが口コミにつながり、現在約60名が所属する庄野シリウスのチームづくりへとつながっています。
7月27日(月)21:00〜開催
子どもの本気を引き出す
大人の関わり方
全国優勝3回・多賀少年野球クラブ 辻正人監督が、幼児・低学年との関わり方、人が集まるチームづくり、子どもが自ら成長する環境づくりについてお伝えします。
後編予告
後編では、親コーチから監督になった林監督が、保護者や親コーチとどのようにチームを支えているのかをご紹介します。
・親コーチを選ぶ時に見ていること
・野球経験よりも人柄を大切にする理由
・親コーチだけに任せない組織づくり
・勝敗よりも子どもの成長を優先する考え方
約60名が所属するチームを、監督一人だけで動かすことはできません。
その裏側には、「親コーチだったからこそ分かる」林監督ならではのチーム運営がありました。
少年野球チームに保護者をどう巻き込み、どのように役割を任せているのかを深掘りします。








