
【日本一の裏側・後編】怒鳴る指導をやめたら、子どもが変わった 中条ブルーインパルスが実践したチーム改革とは
2022年、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)で初の日本一に輝いた、石川県・中条ブルーインパルス。
子どもが自ら考え、仲間と話し合い、自分たちで成長していくチームづくりを大切にしている全国優勝チームです。
前編では、同チームが掲げる
「野球を教える」のではなく、「野球で教える」
という育成方針をご紹介しました。
そんなチームは、最初から完成していたわけではありません。
倉知幸生監督自身も、かつては怒声や厳しい指導が当たり前だったと振り返ります。
では、なぜ指導を変えることができたのか。
今回は、倉知監督が全国優勝3回・多賀少年野球クラブの辻正人監督と出会い、実際にチームへ取り入れたこと、そして子どもたちに起きた変化について伺いました。
チーム概要

▲石川県津幡町を拠点に活動する中条ブルーインパルス
チーム名
中条ブルーインパルス
創設年
1984年
部員数
37名
活動場所
石川県津幡町
活動日
5・6年生:平日(火・木・金)、土日
4年生以下:平日(水)、土・日
監督

▲中条ブルーインパルス・倉知幸生監督
倉知幸生(くらち・こうせい)。1972年生まれ、石川県出身。津幡高校では硬式野球部に所属。卒業後は佐川急便北陸支社軟式野球部で5年間プレーし、全国準優勝を経験した。2008年に中条ブルーインパルスのコーチに就任し、2010年から監督を務める。2022年、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会でチームを初の全国制覇へ導き、2024年には全国スポーツ少年団軟式野球交流大会で準優勝。2025年4月には室内練習場「NEOFIELD」を設立し、雨の多い地域でも子どもたちが野球やさまざまなスポーツに取り組める環境づくりにも力を注いでいる。
※記載情報は2026年7月現在
最初に変わったのは、子どもではなく指導者だった

▲以前は怒鳴る指導が当たり前だったと振り返る倉知監督
倉知監督は、以前の自分を「ブラックだった」と振り返ります。
勝つためには厳しさが必要。
怒鳴ることも、強く叱ることも当たり前。
そんな指導を続けていました。
しかし、多賀少年野球クラブへ通う中で、その考え方が大きく変わります。
「自分も変わらなければいけない」
辻監督の姿を見て、そう感じたそうです。
怒声や罵声をなくし、まずは子どもとの向き合い方を変えることから始めました。
子どもとの距離が縮まり、会話が増えた

▲子どもたちとの距離が近づき、自然と会話が増えていった
指導を変えて最初に感じた変化は、子どもたちとの距離でした。
それまで監督を怖がっていた選手たちが、自分から話しかけてくるようになったのです。
「ここはどうしたらいいですか?」
「こう考えてもいいですか?」
質問が増えたことで、子ども一人ひとりの考えが見えるようになりました。
「10人いれば10通りの考え方がある。
それが自分自身の学びにもなった」
指導者が答えを与えるのではなく、一緒に考える。
その積み重ねが、チームの雰囲気を少しずつ変えていきました。
ノーサイン野球は「子どもを信じる」と決めることだった

▲ノーサイン野球は「子どもを信じる」と決めることから始まった
もう一つ、大きく変わったのが「ノーサイン野球」です。
多賀少年野球クラブでは、監督が細かなサインを出しません。
子どもたちが状況を見て、自分たちで判断します。
倉知監督も取り入れましたが、最初は葛藤の連続だったそうです。
「サインを出した方が早い」
「ここは指示したい」
そう思う場面は何度もありました。
それでも我慢し続けました。
子どもたちが考える時間を奪わないためです。
続けるうちに、選手たちは自分たちで状況を判断し、仲間と声を掛け合いながらプレーするようになりました。
倉知監督は、2022年の日本一も、その積み重ねがあったからこそだと振り返ります。
もっと詳しく聞いてみたい方へ
中条ブルーインパルスのチームづくりの原点となった
「子どもとの関わり方」について、
多賀少年野球クラブ・辻正人監督ご本人がお話しします。
学び続ける理由は「辻監督の声かけ」

▲現在も多賀少年野球クラブへ足を運び、学び続けている
中条ブルーインパルスは現在も毎年、多賀少年野球クラブを訪れています。
試合をすることだけが目的ではありません。
倉知監督が一番見ているのは、辻監督の「子どもへの声かけ」です。
どんなタイミングで選手を集めるのか。
どんな言葉を掛けるのか。
どうやって子どもたちの気持ちを前向きにするのか。
ベンチで試合を見るよりも、辻監督の動きを見ている時間の方が長いこともあるそうです。
「追いついたと思ったら、
また先に行っている。」
倉知監督は、辻監督をそんな存在だと表現します。
だからこそ、今でも毎年、多賀へ足を運び続けています。
子どもを変える前に、大人が変わる
今回の取材で印象的だったのは、倉知監督が「子どもを変える方法」についてほとんど語らなかったことです。
話していたのは、
- 自分が変わったこと
- チームの雰囲気が変わったこと
- 子どもとの接し方が変わったこと
大人が変われば、子どもも変わる。
その考え方こそが、中条ブルーインパルスが日本一へたどり着く土台になっていました。
そして、それは辻監督が長年大切にしてきた育成論でもあります。
取材を終えて
今回の取材を通して感じたのは、倉知監督が「子どもを変える方法」ではなく、「大人がどう関わるか」を考え続けているということです。
全国優勝という結果の裏側には、子どもを信じ、待ち、任せる積み重ねがありました。
その積み重ねこそが、中条ブルーインパルスのチーム改革を支えていたのだと感じます。
大人の関わり方を見直したい方へ
7月27日(月)21:00〜開催
子どもの本気を引き出す
大人の関わり方
全国優勝3回、部員150名超の多賀少年野球クラブが実践してきた考え方を、辻監督ご本人から学べる機会です。








