
【対談】親の“過干渉”が子どもから考える力を奪う。専門家が語る「親子の適切な距離感」とは
野球を頑張る子どもを応援したい気持ちが強いあまり、つい熱が入りすぎてしまう……。そんな「親子の距離感」に悩む保護者は少なくありません。
今回は、5/18開催の「球縁交流会」にて行われた特別トークセッションの模様をお届けします。全国を回る野球講演家・年中夢球さんと、ベースボールアドバイザー/BT野球スクール代表であり野球少年の父でもある生島峰至さんに、親子の適切な関わり方について伺いました。(進行:TURNING POINT 三島健太)
――帰りの車や風呂場が「取り調べ室」になっていませんか?
三島: 野球の技術的なこと以上に「親子の距離感」に悩まれている保護者の方は多いと思います。熱が入りすぎて子どもに引かれてしまったり、逆に関わらなすぎても難しかったり。年中夢球さんは全国を回る中で、関係性が良い親子の特徴はどういったところにあると感じますか?
年中夢球: 関係性が良い親子の共通点は、親御さんが「結果」のことを言わないことですね。「今日、何本ヒット打ったの?」「エラーしなかった?」と聞かれると、子どもって自分が結果を出したときは勝手に喋ってくるものなんです。
でも、子どもなりに「今日はいいことなかったな」と思っている時は顔に出ます。それなのに親が結果を聞いてしまうと、距離感はあまり良くならない。特にお父さんコーチなどで熱い方は、帰りの車やお風呂場が「反省会」という名の「取り調べ室」になってしまっているケースが多いです。子どもは外でも結果のことを言われているので、家ではあまり言わない方がいいと思いますね。僕は、自分の子ども3人の年齢すらパッと出てこないくらい、いい意味で干渉しない距離感を持っています。
――過干渉が行き過ぎると「他責」にする子どもになる
三島: 干渉しすぎないということですね。分かってはいるけれど、つい口出ししてしまう……という親御さんも多そうです。
年中夢球: 自分の欲が上回ってしまっている方は多いと思います。過保護が行き過ぎると干渉になり、干渉が行き過ぎると「自分で物事を決められない選手」になってしまいます。
例えば、レストランで何を食べるかお母さんに決めてもらったり、グローブをお父さんに選んでもらったり。そうやって親の過干渉が進むと、自分の決断を他人に委ねるようになります。結果、ハンバーグが美味しくなかったらお母さんのせいにし、グローブでエラーしたらお父さんのせいにする。そこから審判やコーチのせいにするなど、どんどん「他責」にしてしまうんです。「この子は私がいないとダメなんだ」という共依存になってしまうと、子どもの考える能力を奪ってしまいます。
お互いの距離感のために、一度親元を離れた方がいいケースもあるくらいです。特に長男や一人っ子の場合、親としても経験値がないのでガツガツいってしまいがちですね。

――親は“指導者”ではなく、一番の“ファン”であれ
三島: 生島さんは愛知でBT野球スクールを運営されていますが、ご自身も現役の“野球パパ”ですよね。息子さんとの距離感はどうされていますか?
生島: 野球をやっている時は「めっちゃ遠い(距離を置く)」ですね。僕は息子の「ファン」なんです。息子が所属しているチームのファンであり、一番応援している選手が息子、という感覚。ある意味、追っかけみたいなものです。
息子の打席や勝つ瞬間の動画を撮ったり、記録をつけたりはしていますが、打ち方や投げ方について口出しすることはほとんどありません。チームで決められている「グローブを磨く」「カバンを綺麗に並べる」といった野球以外のマナーについては親として言いますが、技術的なことは言いません。
変な意味ではなく、親ができることは子どもへの「課金」だと思っています。体のケアや食事、良いアンダーシャツを買ってプレゼントしたり。それを使うかどうかは本人次第。ファンが推しに差し入れをする感覚に近いかもしれませんね。
年中夢球: 子どもって、仲間のことを話したがりますよね。「今日あいつ凄かったわ!」とか。そういう話が家で聞けると、いいチームにいるんだなと感じます。僕も息子が23歳になっても独立リーグで野球を続けていて、純粋に息子を尊敬していますし、ファンだなと思います。
――自主練は「子どもが主人公」。きっかけと習慣化がカギ
三島: 交流会参加者の方からの質問です。「自主練を強く言わないようにしているのですが、なかなか自分からやりません。どう誘導すればいいでしょうか?」
年中夢球: 自主練は「自分が主人公」の練習です。だから、親に言われた時点でそれはもう自主練ではないんですよね。
きっかけを待つことも大切ですが、おすすめは「習慣」の中に組み込むこと。「お風呂に入る前」「ご飯を食べる前」と決めてしまう。あとは、とりあえずやらせてみて、挫折や悔しい経験を積ませることも大事です。
生島: 僕の場合は、無理やりではなく「キャッチボール行く?」「ティーバッティング一緒にやろうぜ」と連れ出すようにしています。運動量を確保してあげるためですね。でも、教えることはしません。本人が「アウトコースの打ち方を知りたい」と自ら聞いてきた時に、初めてアドバイスをしました。
――当たり前の感謝を伝えることで築かれる信頼
年中夢球: 「お弁当」の話をよくするんです。親が作ったお弁当を、子どもが黙って台所に置くのはやめさせたほうがいい。
必ず手渡しで返して「ごちそうさま」「美味しかったよ」「ありがとう」と言う。これだけで、作っている側は報われます。「お前たちが起きる1時間前から頑張って作ってくれているのだから、それは最低限やらなきゃいけないことだ」と伝えています。子どもが親から元気をもらっているように、子どもも親に元気を与える存在であってほしいですね。
三島: 親子の基本的なコミュニケーションや感謝の気持ちが、野球を長く楽しく続ける秘訣ですね。お二人とも、貴重なお話をありがとうございました。
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