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「親子の距離感が大切」――野球講演家・年中夢球が3人の子育てで学んだ、少年野球における親の関わり方

「親子の距離感が大切」――野球講演家・年中夢球が3人の子育てで学んだ、少年野球における親の関わり方

「子どものためを思っているのに、つい怒ってしまう」「練習を頑張ってほしいのに、なかなか伝わらない」――少年野球に取り組む子どもを持つ保護者にとって、野球と子育ての両立は悩みの尽きないテーマだ。全国各地で講演活動を行う野球講演家・年中夢球氏も、3人の子どもを育てる中で数々の失敗を経験してきた。

かつては自らの子どもを厳しく叱りつける父親だったという年中夢球氏。自身の経験や子どもたちとのエピソードを通じて、親子の適切な距離感と、子どもの成長を支える大人の役割をTURNING POINTのポッドキャストで語った。

熱心な父親ほど陥りやすい「怒りすぎ」の落とし穴

年中夢球氏のもとには、少年野球に熱心な父親の指導に悩む母親から、多くの相談が寄せられるという。グラウンドでプレーの結果を叱られ、帰りの車でも怒られ、自宅に帰ってからも説教が続く。父親の野球に対する熱量が高すぎるあまり、子どもが野球を楽しめなくなってしまうケースも少なくないという。

「僕も長男のときに大失敗したので、お父さんの気持ちも分かりますけど、やり方が違うと思うんです」

年中夢球氏自身、長男が野球を始めた頃にコーチや監督を務め、結果が出なければ厳しく叱る父親だった。「見逃し三振を許さない」というほどの指導を振り返り、当時の自分は、現在発信している考え方とは正反対だったと明かす。

こうした関わり方が続くことで、子どもが自分の意思ではなく、親に「やらされている野球」を続ける状態になってしまうことを危惧している。

「グラウンドで言うことは言って、車に乗った瞬間からお父さんと子どもに戻らないと」

指導者と父親の役割を明確に分けること。それが、子どもにとって野球が苦しいものにならないための第一歩だと説く。

3人の子どもたちとの野球人生――娘からの「パパありがとうね」

年中夢球氏の3人の子どもたちは、それぞれ異なる形で野球に関わってきた。長男は高校3年生の春まで選手としてプレーし、その後は指導者の道へ。現在も父親と指導論について語り合うことがあるという。

一方、長女が野球を始めたことには、父親として複雑な思いがあった。長男と次男が野球に打ち込む中、小学1年生だった娘が突然「私、野球やる」と言い出した。当時、家族の会話は野球が中心。娘が家族の輪に入るために、無理に野球を始めたのではないかという罪悪感を抱き続けていた。

その後、娘は中学校でソフトボールを経験。故障によって選手を断念したものの、高校では横浜商業高校の野球部マネージャーとして野球に携わった。

高校3年生最後の大会へ向かう車中、年中夢球氏は長年抱えてきた思いを娘に伝えた。「お前本当は野球やりたくなかっただろ。お前まで野球界に引きずり込んでしまって、ごめんな」。すると、娘から返ってきたのは思いがけない言葉だった。

「今の私には野球がない世界は考えられない。パパありがとうね」

娘を送り届けた後、一人になった車内で号泣したという。

また、次男は大学野球を区切りに一度は競技から離れることを決意。しかし、その後、自らの意思で再び高いレベルでのプレーを目指し、トライアウトに挑戦。インタビュー時には独立リーグ・堺シュライクスでプレーしていることを明かした。

子どもたちが自分自身で野球との関わり方を選択し、それぞれの道を歩んできたこと。その経験が、年中夢球氏の子育てに対する考え方を大きく変えていった。

「言葉は嘘つくけど行動は嘘つけない」――親に求められる適切な距離感

年中夢球氏が親子関係において大切にしているのは、近すぎず、遠すぎない距離感だ。長男への厳しすぎる接し方を反省し、娘と次男に対しては、帰宅後に自分から野球の話をしないよう心がけてきたという。

一方で、子どもに何も関わらなくてよいというわけではない。「素振りしろよ」「自主練しろよ」と言葉で指示するだけではなく、親自身が早起きしてティーバッティングの相手をしたり、仕事から帰ってきてキャッチボールをしたりする。そうした大人の行動こそが、子どもの意欲につながると語る。

「言葉は嘘つくけど行動は嘘つけない」

また、子どもが失敗する前に親が先回りするのではなく、失敗したときに手を差し伸べることも重要だという。

「普段は言わないけど、いざとなったら親は絶対お前の味方だからなっていうこと。困っても最後には親がいるからなっていうことを、子どもたちに分かってもらうのが一番大切だと思います」

親が子どものすべてを把握しようとするのではなく、信じて見守ること。そして、本当に困ったときには最後の支えとなることが、親の役割なのだ。

自身の子育てを「失敗だらけ」と振り返る年中夢球氏。しかし、野球を通じて子どもたちと過ごした日々は、自分の学生時代以上に青春を感じられる時間だったという。子育ての成功に、決まった答えはない。

「今、子どもが幸せかって聞いたときに『幸せだ』って言えることが、一番子育てって成功してるんじゃないかなと思うんです」

野球の結果だけでなく、その先にある子どもの人生を見守ること。3人の子どもたちと向き合ってきた年中夢球氏の言葉には、少年野球に関わる保護者への大切なメッセージが込められている。


野球講演家・年中夢球 プロフィール

名前
年中夢球(ねんじゅう・むきゅう)

プロフィール
学童野球や硬式クラブチームで20年にわたり指導。野球少年の父としての実体験を生かした精神面でのサポートで、子どもたちの野球現場に関わる人々から支持を集める。SNSやブログでの情報発信をはじめ、著書の出版、講演会など、活動は多岐にわたっている。


年中夢球氏の指導論を、動画でも公開中

子どもとの適切な距離感や、選手の自主性を育む大人の関わり方など。
年中夢球氏が伝える指導のヒントを、TURNING POINTの動画でもご覧いただけます。

年中夢球氏の出演動画を見る