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親は子どもを「見張る」のではなく「見守る」――失敗から学ぶ成長の支え方

親は子どもを「見張る」のではなく「見守る」――失敗から学ぶ成長の支え方

全国47都道府県で講演を行い、少年野球の選手や保護者、指導者に向けてメッセージを届け続ける野球講演家・年中夢球氏。週末には各地のグラウンドへ足を運び、野球の技術だけでは解決できない悩みや、大人の関わり方について語っている。

その活動の原点にあったのは、自身が経営していた会社の経営失敗と、指導者・保護者として重ねてきた失敗だった。参加者わずか5人の講演会から全国へと広がった歩み、そして「子どもを見張るのではなく、見守る」という信念を、TURNING POINTのポッドキャストでの対話から紐解く。

会社の経営失敗から始まった活動――参加者5人から全国47都道府県へ

年中夢球氏が講演活動を始めたのは、約10年前。当時は自身が経営していた会社を失い、3つのアルバイトを掛け持ちして生活していたという。転機となったのは、少年野球の現場で積み重ねてきた経験をブログで発信し始めたことだった。

軟式野球で2年間、硬式野球のリトルリーグで20年以上にわたり指導者を務める中で、多くの選手、保護者、指導者と向き合ってきた。自身も保護者として、試合に出られる子ども、出られない子どもの両方の立場を経験。だからこそ、ブログでは華々しい成功談よりも、自らの失敗や現場で感じた葛藤を伝えることを大切にしてきた。

やがてブログの閲覧数は増え、周囲の勧めをきっかけに講演会を始めた。しかし、最初から多くの人が集まったわけではない。交通費にも余裕がなく、名古屋へは在来線を乗り継ぎ、仙台へは深夜バスで向かった。講演会の参加者が5人しかいなかったこともあるという。

「5人しかいないと思ってへこむ部分もありました。でも、5人でも来てくれたんだなという気持ちもあったんです」

目の前の一人ひとりに全力で語りかけたことが、新たな講演依頼を生んだ。参加者の中に少年野球チームの監督や連盟関係者がいたことから口コミが広がり、活動は全国へ。今では47都道府県すべてで講演を行い、同じ地域を何度も訪れるまでになった。

「お客さんが5人だろうと、300人、400人、500人だろうと、熱量は変えちゃいけないと思っています」。「行動してくださる方には、行動で返したい」という思いが、各地を飛び回る活動の原動力となっている。

挨拶や整理整頓は何のため?――「形」ではなく「本質」を伝える指導

年中夢球氏が講演で伝えているのは、野球の技術論だけではない。選手には「なぜ挨拶をするのか」「なぜ道具を整理整頓するのか」「感謝とは何なのか」と問いかける。少年野球では当たり前とされる行動も、その意味を子ども自身が理解しているかどうかが重要だという。

「大きな声で挨拶しろとか、カバンを綺麗に並べろとか。形ばかりを指導しても、本質が伝わっていなければ意味がないと思うんです」

指導者の言う通りに行動できたとしても、理由が分かっていなければ、指導者の目が届かなくなった途端にやらなくなるかもしれない。大切なのは、決まりを守らせることだけでなく、行動の意味を言葉にして伝えることだ。

一方で、こうした考えを、最も伝えたい指導者に届ける難しさも感じているという。講演依頼の約8割は保護者から寄せられるが、指導者の中には外部の意見を取り入れることに抵抗を感じる人もいる。

「意見が合わないからこそ、聞いてほしい場面もあると思うんです」。指導歴や年齢にかかわらず学ぶ姿勢を持ち、自分とは異なる考え方にも耳を傾けること。その姿勢こそ、指導者に求められていると語る。

親は子どもを「見張る」のではなく「見守る」――失敗から学ぶ成長の支え方

保護者に向けた講演で、年中夢球氏が繰り返し伝えている言葉がある。

「親は子どもを見張るんじゃなくて、見守ってください」

例えば、学校に遅刻しそうになれば車で送り、忘れ物をすれば学校まで届ける。子どもを思っての行動であっても、その先回りによって、失敗を受け止めたり、自分で謝ったりする機会を奪ってしまうのではないかと問いかける。

失敗した時に自分で「すみません」と伝え、次はどうすればよいかを考える。野球でも同じように、大人が必要以上に干渉せず、子どもが自ら考え、行動する余地を残すことが大切だという。

こうした言葉には、年中夢球氏自身の経験も重なっている。新型コロナウイルスの影響で、次男が甲子園を目指す機会を失ったこと。子どもの最後のユニフォーム姿を、スタンドから見届けられなかったこと。野球を続けられることも、親としてその姿を見守れることも、当たり前ではないと実感したという。

また、子どもが小学生の頃に講演を聴いた保護者が、高校3年生になって再び足を運び、同じ話でも受け止め方が大きく変わったと伝えてくれたこともあった。子どもの成長に合わせて保護者の立場は変わり、年中夢球氏自身が語る内容も、約10年前と現在とでは半分以上が変化しているという。

「10年後に自分がどんなことを話しているのか、それを確かめたい気持ちもあります」

野球を通じて子どもたちが何を学び、大人がどう成長を支えていくのか。目先の結果だけにとらわれず、その本質を問い続けながら、年中夢球氏はこれからも全国の選手・保護者・指導者に思いを届けていく。


野球講演家・年中夢球 プロフィール

名前
年中夢球(ねんじゅう・むきゅう)

プロフィール
学童野球や硬式クラブチームで20年以上にわたり指導者として活動。野球少年の父親としての実体験も生かし、子どもたちの精神面を支える活動を続けている。SNSやブログでの情報発信、著書の出版、全国47都道府県での講演会など、その活動は多岐にわたる。


年中夢球氏の指導を、動画でも公開中

子どもを「見守る」関わり方から、選手の心の成長を支える言葉まで。
年中夢球氏が伝える指導のヒントを、TURNING POINTの動画でもご覧いただけます。

年中夢球氏の出演動画を見る