
【後編】「未経験のパパコーチ」こそ優秀!? 成長期の子どもを守る最新の指導理論と目標設定
――緑川さんはプロ野球選手と同時に、小中学生の指導もされています。レベルの違う選手への指導で、教え方に違いはあるのでしょうか?
緑川:実は、基本的な動作や形作りのドリルに関しては、プロも小学生も同じなんです。むしろ、元々は小学生向けにやっていた練習をプロの選手がやり始めて、そこから応用が利いて新しいドリルが生まれ、それをまた子どもたちがやる……という良い循環が起きています。 子どもたちからすれば、「プロ野球選手も自分たちと同じ練習をしている!」と知ることはすごく新鮮ですし、ドリルによってはプロより小学生の方が精度が高いなんてこともたまにあります(笑)。
――プロの世界を経験したことで、小中学生への指導に還元されたことはありますか?
緑川:「体への負担を減らすこと」への意識が大きく変わりました。プロは毎日のように試合があり、疲労度が桁違いです。そこで膝を地面に突いて構えるスタイルなどを推奨したところ、選手から「体への負担が全然違う」という声が上がりました。 これを聞いて、「成長期の子供たちこそ、必要のない疲労や負担をかけないプレーをすべきだ」と確信を持てたんです。プロで実証された負担軽減の技術や、限られたスペースからスムーズに動き出すための「リズムトレーニング」などは、自信を持って子どもたちにも伝えられるようになりました。

――アマチュアの現場では、キャッチャー未経験のお父さんコーチが指導に悩むケースも多いです。アドバイスはありますか?
緑川:キャッチャー経験がないことは、逆に「強み」になると思います。メジャーリーグでも、キャッチャー経験のないコーチがゴールデングラブ賞の選手を育てた例があります。 経験がないからこそ、昔の常識や「俺の時はこうだった」という固定観念に縛られず、目の前の選手にとって本当に必要なことをフラットに学んで伝えられます。「俺の時は水が飲めなかったからお前らも飲むな」と言うのと同じで、昔の常識を押し付けるのは苦しいですよね。「経験がないから教えられない」と諦めるのではなく、選手と一緒に動画などを見て新しい知識を学んでいく姿勢があれば、素晴らしいコーチになれるはずです。
――最後に、選手を成長させるために、指導者が心掛けるべきことを教えてください。
緑川:選手に対して「ワクワクする未来」を、できるだけ臨場感を持って見せてあげることですね。目標が遠すぎたり大きすぎたりすると、選手はどう動けばいいか迷ってしまいます。 選手が「ちょっと頑張れば手が届く」と思える絶妙な目標設定をしてあげることが大切です。目的地までのルートはたくさんあっていいんです。指導は最短ルートを提案しつつ選手の進みたい方向へ案内します。その中で道に迷ったり逸れてしまいそうな時「こっちだよ」と修正してあげる。そうやって一緒に乗り越えていく伴走者であることが、選手を伸ばす一番の鍵だと思います。
取材:2026年4月
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